眼瞼下垂には何度も触れたように様々な原因と症状があり、共通の治療法というものがありません。個人の症状・状態に合わせたきめこまかい治療が必要になります。加齢により皮膚がたるんで眼瞼が垂れ下がってしまっている場合もありますし、先天的に眼瞼挙筋の力が弱い場合や、あるいは瞼の腱とつながっていないなどで眼瞼下垂を起こしている場合もあります。コンタクトレンズの悪影響や、パソコンを使った長時間作業で眼瞼挙筋が疲労衰弱して起こる眼瞼下垂もあります。女性の場合、頻繁なお化粧の影響で瞼をこすり過ぎ、これが眼瞼下垂の原因になることも多々あります。
眼瞼下垂の合併症はなぜ起こるのでしょうか。眼瞼挙筋が弛緩したり、腱が剥離したりすると瞼が重くなります。瞼をしっかり開けるため無意識に前頭筋や、眼瞼挙筋にくっついているミュラー筋を酷使することになるわけですが、ここで注目すべきは、ミュラー筋を酷使すると交感神経がオンになるということなのです。
眼瞼下垂でキーポイントとなるのがこのミュラー筋です。ミュラー筋の収縮運動には交感神経の働きが必要になるのです。当然アドレナリンが分泌されます。つまり眼瞼下垂の場合、常に緊張・興奮状態にあるのと同じ状態になってしまい、これが様々な悪影響・合併症に繋がっているというのです。眼瞼下垂の手術を行うことにより前頭筋やミュラー筋の負担を除いてやることで、劇的にこれらの症状も改善します。
眼瞼下垂のうち、特に加齢による眼瞼下垂や先天性の眼瞼下垂の場合、外科的手術で根本的治療が可能です。外科的手術には大きく分けて2種類あります。上瞼の眼瞼挙筋がまだ生きている場合には「腱膜縫縮法」という手術が行われます。この症状では眼瞼挙筋が伸びきってしまっているため瞼を持ち上げられなくなっているわけですから、これを縫い縮めることで瞼の開閉が楽に行えるようにするものです。
眼瞼下垂の外科手術のもうひとつは「筋膜移植法」というものです。眼瞼挙筋がほとんど機能していない状態の患者さんに対して行われる手術です。眼瞼下垂の人の場合、無意識に前頭筋を使って目を開けようとしているわけですが、これをもっと楽に行えるように、眼瞼挙筋と前頭筋を直接つないであげるという手術なのです。こうした外科的治療を行うことでミュラー筋への負担が軽くなるので、必然的に頭痛・肩こり・不眠・腰痛・をはじめとした多くの合併症、眼瞼下垂を遠因とする鬱病の発症も阻止されることになります。